社伝に依ると東山三十六峰中、十五峰目である椿ケ峰を御神体とした山霊崇拝の社でありましたが、仁和三年(八八七)宇多天皇の御悩平癒祈願のため、贈正一位尚侍藤原淑子が勅命を奉じて、少彦名命を京都御所の真東にあたる椿が峰に奉祀して創建された勅願社であります。又、宇多天皇の信任の厚かった菅原道真公が合祀されました。
創建当初は椿ケ峰山天神と称せられ、皇室公家はじめ朝野の信仰厚く次いで大宝大明神と呼ばれ、円成寺の鎮守神として霊験殊の外なるに合せて、清遊に好適なる現在の地に、後一条天皇の寛仁年間(1017年)に遷座、大豊大明神の神号を賜わり、社運盛大にして神域は広大なものでありました。
歴史は巡り昌平の御世となりました。自然の相を観、自然の声を聞く幽玄閑静なる霊地として、北は法然院、霊鑑寺、南は永観堂、南禅寺までの産土神大豊神社は、昭和二十九年、京都市よりいにしえの都の古刹として「名勝地」に指定され、京都哲学の道の「狛ねずみの社」として全国より多くの参拝者を迎える今日となりました。
祈るとは今の幸せ謝すること
その祈り又幸せを呼ぶ
大豊神社の背後にある椿ヶ峰より流れる水は、天の真清水「御神水」であります。自身の罪穢を祓い清め、日々感謝の心、清く正しい心を持ち、努力を惜しまず、他人を思いやり、善行を積み重ねれば御神号の如く「大」いに「豊」なる御利益がございます。
「惟神の道」とは、精神的にも肉体的にも健康で勤しみ勉めたならば、価値創造の喜悦に輝き福徳はおのづからにして身に具わるという弥栄の哲理なのです。人間としてこの世に生をうけた本当の尊さを知り、遠き祖先と民族を偲ぶと同時に、今の幸せを神に感謝し、世の為、人の為に尽くすのが神道の教えです。
また、洛中一の枝垂紅梅、枝垂桜や多くの古典種が咲く「椿の名所」でもあり、四季折々の山野草がご参拝の皆様の心をおなぐさめいたしております。
祭礼日 氏神祭(5月4日)
南禅寺から法然院に至るまでの地域を毎年5月4日に巡幸する大豊神社の氏神祭。剣鉾が美しい音を奏で祓い清めた後を神輿が渡御する古い祭礼形態が今も残る歴史的伝統的文化遺産です。